2008年3月30日日曜日

The Bottom Billion -最貧の十億人

国際的には一人当たり、1日1ドル稼ぐかどうかが貧困を決める基準となっている。そして、世界人口の6.7人に1人、つまり世界中で約10億人にものぼる人がこの最貧困層に当てはまると言われている。ちなみに日本総人口の約8倍にもあたる。相当な数だ。私の働くシエラレオネでは人口の57%にもあたる人(約360万人)がこの層にあてはまる。さらに、教育機会と公衆衛生を考慮に入れた国連開発計画の発表する人間開発指標でいうと、世界で最も貧しい国ということになっている。 

オックスフォード大教授ポール・コリエーの最新本「The Bottom Billion」では、このような層に開発援助の焦点を置くべきだとも言っている。ターゲットをはっきりさせ、限りあるリソースを集中させるという彼の議論は納得しやすいし、私も同意する。さて、平和構築の現場で、これはどのようなことを意味するのだろうか。私の住む家で、当初お手伝いさんとして雇っていた「ペムダ」という女性を例に考えてみる。

ペムダはもともとシエラレオネ到着直後にお世話になったギニア人のドライバーの紹介で雇った女性だ。後に彼の妹と判明したが、、、。彼女は、2人の子供とともに、フリータウン中心街のゴミ捨て場の近くのスラムに住んでおり、この十億人貧困層に当たる女性だ。夫はギニアで出稼ぎをしている。2人の子供を学校に送る収入も無く非常に貧しい生活をしていたが、我々の家のお手伝いさんとして来てもらうことになって、月100ドルの給料を渡していた。この収入は大卒のシエラレオネ人の公務員の初任給が月70ドルにも満たない国で、破格の給料だろう。この仕事を得た後、彼女がどのようにお金を使うのか非常に興味を持って見ていた。皆さんは、彼女がこの100ドルを何に使ったと思いますか?
答えは、携帯電話、美容院そして新しい服。友人とのおしゃべりができるようにし、髪を整えて新しい服で、おしゃれな気分を味わうことに決めたようだ。これには少し驚くとともに、自分の人間心理とでもいえばいいのか、それに対する浅い理解を知った。

このお金の使い方は、子供を学校に送るとか、トタン屋根の家をもう少し住みやすい家に建て替えるとか、小規模事業を始める資金に充てるといった、開発業界の人々がアドボケートするようなお金の使い方ではない。携帯を購入して、おしゃれになったからといって、彼女の将来の生活、そして、子供たちの生活が向上するわけではないだろう。こういった人々が、どのように貧困層から抜け出すことができるのか?雇用を与えたからといって、最貧層から抜け出すことができても、将来彼女自身、そして彼女の子供が今後生きる上での選択肢が増えるわけではないだろう。
こういったペムダのような人々が、どのように人生における効率的な投資を行うようにもっていけるか。どのように「向上心」とでもいうのか、よりよい生活を送ることができるような意志をもつように出来るのか。最貧層の人々の「こころもち」を改善すること、それが最重要課題ではないだろうか。

2008年3月29日土曜日

Total Cost of Jerks - TCJ

しばらく前に読んだ記事で、記憶に残っているものがある。それが「Building the civilized workplace」だ。この記事は、職場で「Jerk」(日本語では、「うっとおしい人」とでも訳せばいいのだろうか)の存在は他人を不快にさせるだけではなく、組織の生産性を低下させるというもの。この「うっとおしい人」とは、こういうことをする人だという:


  • 個人の誹謗・中傷
  • 頼まれてもいないのに体に触ってくる
  • やる気をなくさせるようなEメールを送る
  • 悪い目つき (Dirty Look)を送る
  • ある職員を存在していないかのように扱う

リストを見ると「ハラスメント」を言い換えたようなものとも言えるかも知れない。このような、「非文明的」な行動は、被害の対象となった職員の仕事に対するモティベーション低下、人事部のこれらのケースに対する時間など、組織の非生産的側面に大きな影響を与えるという。さらに、こういった行動は、組織内で「感染」し、同じようなJerkを作ってしまうとも言っている。ある試算によると、一人のJerkの組織に対するコストは、年間1千7百万円程ととなったらしい。面白いのは、Total Cost of Jerksという概念は、かなりアメリカのビジネスで浸透しているようで、TCJというアクロニムまで出来上がっている。あるアメリカの会社では、社訓として「Jerkを雇わない」というものまであるそうだ、、、。

さて、このような行動規範というか職場での倫理感というものは、なかなかつかみどころがないため、たとえば途上国での行政改革を行う際にほとんど出てくることがない。そのため、機能分析だとか、給料体系見直しだとか、IT導入だとか、KPI設定だとか、「ハード」なシステム周りの設計が改革の中心となる。確かにこれらは非常に重要で、私個人をこういった分野ばかりに関心が向かいがちだが、結局は個人の行動様式が変わらなければどのような仕組みを作っても行政の効率性は上がらないだろう。自分の職場を見ても、やはり、個人のもつ職業倫理、他の同僚とのチームワークが生産性に大きな影響をもたらすことは明らかだ。その意味では、シエラレオネの新政府の打ち出した「態度の変革」キャンペーンは面白い。政府内でのプロフェッショナリズム向上、国民のレベルでは、「公共の物を盗まない」など態度の変化を求めている。効果を図るのは困難だろうが、こういった分野に対する関心自体は正しいのではないかと思っている。

2008年3月26日水曜日

シエラレオネに来て一年

今日でちょうどシエラレオネに赴任して1年になる。早いものだ。思えばいろいろなことがあった。

到着してすぐに、平和構築基金のプロジェクトがどっと認可され、ばたばたしたかと思えば、大統領選挙に向けての準備で忙しくなり、その後は、2008-2010年の3年間のUNDP戦略作りが始まった。また内部の経営基盤を強化するためのトレーニングも始めた。新たなHIV/AIDSのポートフォリオも立ち上げ、日本人職員もJPO1人とUNV2人の合計3人来てもらうことにもなった。JICAとの合同ワークショップも無事終わり、新政権に対するサポート体制もだいぶ強化されてきた。

たかが一年、されど一年。なかなか楽しいことをさせてもらったと同時に、多くのことを学んだ。国連機関を含む国際支援の重要さと同時に、気をつけなければいけないことも学んだ。アフリカ開発の難しさと忍耐の重要さも学んだ。これらの教訓に基づいて、2年目をさらに実りのある年としたい。

2008年3月24日月曜日

お気に入りのPC

今の時代はやはりPCは不可欠。しかし問題は、色々ありすぎて選ぶのが難しいこと。IBMのThink Padや、ソニーのバイオ、マック、東芝のPortegeなど、大学時代にPCを持つようになってから私も色々な機種を試したが、どうやら「これだ」というものにたどり着いた模様。それがPanasonicのLet's Note。海外ではTOUGHBOOKというブランドで発売されている。

何がいいかと言うと、まずバッテリーの持続度。10時間もつという触れ込みだが、節約して使うと、7-8時間くらいは十分もつ。これは、国内外での出張時に大きな強みとなる。さらにいいのが軽さ。CDロムも内蔵して、1.25キロという軽さ。どこでも持ち運びができる。また、TOUGHBOOKというだけあって、タフ。試したことは無いが、少しくらい水がこぼれてもいいそう。振動にも強い。以前東京に休暇で帰ったとき、友人を通じてあったベンチャー投資会社の人も同じモデルを持っており、「これいいですよねー」とお互いのモデルをほめちぎっていた。あまりにも私が褒めるので、UNDPの同僚も休暇で国外に出た際に同じモデルを購入した。途上国へ出張が多い開発業界の人、お勧めですよ。

2008年3月23日日曜日

家の敷地内にある植物

以前も紹介したかと思うが、私はヒルステーションという丘の上のエリアに住んでいる。この写真の建物の3階におり、2階には特別法廷で働くアメリカ人のCが住んでいる。1階は日当たりが悪いせいか、まだ入居者がいない。

実は今住んでいる家の敷地内には、結構いろいろな果物が生っている。別に世話をしている訳でもないのだが、勝手にどんどん育っている。




まずは、パパイア。日に日に大きくなる。しかし食べごろになるまでには時間がかかりそうだ。セキュリティーガードには、「私が食べたいから、食べないでくれ」と念を押している、、、。










そして、ライムの木。いつもこのライムをジントニックに絞る。魚を料理したときにも大活躍をする。やはり木から直接とったものは新鮮でおいしい。しかし、最近とりすぎて、数が少なくなってしまった。こうやって希少な動物は減っていくのだろうか、、、。しばらくとらないでおこう。










マンゴの実が生っているいることにも最近気づいた。ここのマンゴはかなりおいしい。バナナの木も隣にある。やはり熱帯の太陽のおかげなのだろうか。何もしていないのにこれだけ育つのを見ると、この国で農業が再開すれば、かなりのインパクトがあげられるのではないかと素人としても考えてしまう。JICAの同僚によると、しかし、この国の土壌の質はあまり良くないのだそうだ。










ところで先日書いた、CO2排出に関して、私の建物が輩出している莫大なCO2を吸収するにどのくらいの木が必要かを調べてみた。杉の木で換算すると、2300本以上が必要になるという(専門家の方、これも間違っていたら教えてください、、、)。敷地にある植物では全く足りない。やはり消費量を削減するのが一番効果的だろう。

2008年3月21日金曜日

CO2排出について考える

政権が変わってからは、首都圏で公共の電気が流れるようになったが、それでも電気がとまることも多い。最低限の使用に抑えようとしているが、やはり電気がなければ不便だということで、家に備え付けの発電機を使うことが多々ある。町中のスーパーや、ホテルでも使用量が減っているとはいえ、かなりの頻度で発電機を使っている。

家の発電機をつかうと、約4リットルものディーゼルが1時間でなくなる。一時間で約700円のコストがかかる。電気が通る以前は一日に9時間近く稼働させていたので、一日に36リットル消費していたことになる。
国連のデータによると、シエラレオネの人口一人当たり平均1年間のCO2排出量が、180キログラムという。3人が居住する我々の建物での排出量はディーゼル1Lで2.6キログラムのCO2排出とすると(専門家の方、間違っていたら教えてください)、我々一人当たりのCO2排出量は一日で30キログラムにも達し、シエラレオネ平均の60倍以上ということに気付いた。これに車でのガソリン消費などを加えると相当なCO2排出をしていることになる。さらに、国連職員皆がこれほどのCO2を排出しているとすると、総合でかなりの環境に対する影響となる。 これは相当反省し、発電機の使用を最低限にとどめると同時に、公共基本インフラの重要さを再認識する。

2008年3月20日木曜日

食糧買出し

しばらくシエラレオネを離れていたので冷蔵庫が空っぽになっていた。土曜日に友人を呼んでパーティーをする予定もあるので、町まで車で買い物に出かけた。シエラレオネ今日は祝日ということもあって道は空いている。中心街にあるマーケットまでいって、新鮮な野菜、果物、卵などを買った。 ちなみにこれらの野菜類はほとんど隣国のギニアから輸入されているという。この国では戦争の影響で、以前は盛んだった農業が衰退してしまった。米などもなんと中国、タイ、インドなどから輸入している。地元の米は輸入米よりもかなり高いので、地元の人たちも輸入米を食べているのだ。



次にレバノン人経営のスーパーマーケット「モノプリ」(フランスにあるチェーンのスーパーと同じ名前だが全く関係なし)で買出し。その後海岸沿いの「チャイナタウン」(説明するまでもなく中国人経営)に餃子の皮を探しに行ったが見つからず。ちなみにここはレストランもあり、フリータウンに到着した当日に同僚が連れて行ってくれたところだ。味はそれほど良くない。最後に、以前も紹介した魚を売っている海岸沿いの店に行って新鮮な海老と鯛を購入。

これで一週間はもつだろう。

2008年3月19日水曜日

戦略の前に人材

UNDPでは毎年恒例のグローバル・スタッフ・サーベイの結果が発表された。

グローバル・スタッフ・サーベイとは、本部やフィールド事務所で働く職員を対象に、仕事の満足度、経営陣に対する評価などを図るための調査で、上司に対して直談判しにくいような事を匿名で汲み上げることができる。人事評価制度が上司からスタッフに対する一方通行しかない国連のような組織で、より「公平」な視点を導入するのに役立っている。

匿名ということもあり、毎年かなり正確な結果が出てくる。特に新しい事務所のトップやナンバー2が就任した場合など、前任者との比較が非常にきれいに出る。また、新しい内部の取り組みを始めた場合なども、その分野のスコアが顕著に変わる。

こうった調査で毎回再確認されるのが「人」の重要さだ。いくらきれいな戦略を作っても、実行できる人材がいなければ全く意味がない。また、良い人材がいなければきれいな戦略自体も作れない。ある人事コンサルティング会社のスローガンとして「戦略の前に人材」というものを以前見たことがあるが、本当にそうだと最近思う。良いスタッフを雇い、十分なトレーニングの機会を与え、潜在能力が完全に発揮できるような職場環境を提供する。私自身、マネージャーとしてまだまだ改善するべきことが多い。

2008年3月17日月曜日

Home Sweet Home...

昨日の夜7時のマラケッシュ発フライトで、シエラレオネに帰ってきた。カサブランカでのトランジットで待つこと3時間ほど。カサブランカから直行と思っていたらまたリベリアのモンロビアで30分ほどのトランジット。シエラレオネの空港に着いたのが今朝の7時。モロッコは近いようで遠い。(ちなみにパリまでは直行で3時間ほど)

シエラレオネでは空港から首都フリータウンに移動するのも大変だ。道路が整備されていないため、車で空港から首都のフリータウンに行こうとすれば5-6時間もかかる。30分ほどで首都に着くナイジェリア人の経営するホーバークラフト(船自体は中国のものと思われる)がここ最近通っていたが、去年の末あたりに事故で沈み、経営がストップ。15分で首都に着くヘリコプターも2社通っていたが、一社は去年の半ばに墜落事故を起こし(22人死亡)、経営が停止。もう一社のUTAirがラストリゾートだったが、出張中に経営を停止した模様。出発前にチケットを買っていたがどうしようもない。国連のヘリも今日は午後まで運航していないようだ。
という訳で、結局ローカルのフェリーでフリータウンに帰ってくることになった。このフェリーも、フリータウンのはずれに到着するため、家に着いたのは朝の9時半。モロッコのホテルを午後4時に出たので、ドア・トゥー・ドアで移動で合計17時間半かかったことになる。移動中あまり睡眠がとれなかったため、家で12時に予定されていたジュネーブとの電話会議までに、1時間ほどの睡眠をとった。
このように日本では当然としているような基本インフラの欠如は当然のように国の発展に大きな影響を及ぼす。この空港からの移動はほんの一例で、電気や水道、他の県までの道路の整備具合は非常に低い。政権が代わってからフリータウンのみでは電気が通るようになったが、これに伴う経済効果は計り知れない。そこらじゅうで、バスなどで通勤する人たちをターゲットにした、冷たい水を売る人が増え、彼らにとっては重要な所得の増加をもたらしているという。
なにはともあれ、home sweet homeに戻ってきた。たまったメールと仕事を効果的に処理していかなければいけない、、、。

2008年3月14日金曜日

マイクロトレンド

クリントン元大統領や、ブレアー元首相などの選挙アドバイザーを務めたマーク・ペンの書いた「マイクロトレンド」という本を読んでいる。フラット化した世の中では、「メガトレンド」といった、単一で国民・世界全体を巻き込むような流行は起こらず、相反するような小さなスケールの「流行」が様々なレベルで起こっており、これらの小さな流行が世界を左右するような力をもつという。

そして、例として70以上の小さな流行を統計を駆使しながら説明している。軽いテーマでは、若者の間の編み物の再流行、ユダヤ教信仰者のデート・結婚の相手としての人気増加などから、もっと硬いテーマの、退職しても働き続ける労働力の増加、ジャーナリズムや弁護士などの「言葉を使う職業」での女性の進出など様々なトレンドを分析している。これらのトレンドの政策や選挙キャンペーンに対する影響にも言及している。

さて、シエラレオネのような最貧国では、この本の議論がどのような示唆を与えてくれるだろうか。

まず、先進国では豊富に存在するデータ自体が存在しない。よって、選挙キャンペーンなどは、暗中模索の中行われる。去年の選挙での政権交代の直前まで、当時の政権政党は自党の勝利を確信していた。また、データが存在しないことによって政策の策定にも影響がでる。ミレニアム開発目標などのようなもう8年も前に合意された枠組みに関しても、データが完全には集まらない。このような中でどのように民意を汲み上げるかは重要な課題だ。

また、いくらシエラレオネのような国でインターネット(首都圏の富裕層のみが使う)が進出したからと言って、先進国で見られるようなソーシャル・ネットワーキングの輪はなかなか広がらない。となると、もうすこしローテクの携帯電話、コミュニティーラジオなどのメディアを最大限に活用することに焦点が絞られる。UNDPが今年から始める「開かれた政府」プロジェクトは、このようなローテクメディアを駆使し、国民と政府の対話を向上させ、大統領府・議会・司法機関の説明責任向上を目指すものだ。

このような小さなトレンドが社会に大きな影響を及ぼすという分析は、「ティッピング・ポイント」でも展開された。私の友人で元同僚のKも「デルタを起こす」(微分積分を覚えていますか、、、?)といって外資系コンサル会社を辞め、子供の教育制度を革新するための新しい会社を起こした。さらに開発分野では、アショカというNGOが「アショカフェロー」という社会企業家のネットワークをサポートしている。このようなマイクロトレンドは、もはや第三者として観察するべきものではないのだろう。私自身はどのようなデルタを起こせるのだろうか。

日本の外で食べる日本食

実はシエラレオネでは結構いろいろな食材が手に入る。海に面していることもあり、新鮮な魚介類は豊富に手に入る。野菜類もギニアから輸入されているが、一通りのものはある。これらの食材でかなりの料理が出来る。

とはいえ、「外食」は限られる。おもな外国人相手のレストランは5つ位で、レバノン人もしくは中国人が経営しているものとなる。よって、レバノン料理もしくは中華料理以外を食べたい時は(かつ自分で料理できない場合)シエラレオネの外に出る機会を待たなければいけない。

エジプトへの出張の後、モロッコのマラケッシュで休暇を取っているが、こういった機会には、日頃から積もり積もった「食願望」が一気に解消されるときでもある。22歳まで日本で育った私としては、やはり日本食が恋しくなる。シエラレオネにいようが、ジュネーブにいようが、ケニアにいようが、マラケッシュにいようが、どうしても日本食を探してしまう。

という訳で、インターネットでチェックし、2006年の12月だったかにオープンしたばかりの「橘」(たちばな)という日本料理屋を探し当てた(ウェブサイトはあまり良くないが、、、)。前回実はケニアに出張した時に行った日本食レストランでかなりガッカリしていたので、モロッコではあまり期待を高めないようにして行ってきた。

ところが予想に反し、かなり質が高い。内装もモロッコのマテリアルを使いながらも和風な雰囲気を醸し出している。清潔度も高い。ウェイターもしっかりしているようだ。アサヒビール(なんとチェコで製造されている)と、鱈の南蛮風料理、茄子の味噌田楽、梅をふんだんに使ったそうめんを前菜として注文した。うまい。ここの日本人シェフはフランスで修業したらしく、日本料理の基本を崩さず少しひねりを利かせた料理だ。メインはお寿司と天麩羅。地元の新鮮な食材を使っておりかなりおいしい。

翌朝、同じRiad(モロッコのゲストハウスのようなもの)滞在しているフランス人と朝食時に話していたら、このレストランのことが話題に上った。彼はフランス人の建築家で、マラケッシュは毎月のように来ているというマラケッシュ通で、このレストランがうまい・まずいなど色々アドバイスをくれた。最後に「ところで、私はまだ行ったことが無いが、橘という新しくできた日本料理の評判がすごくいい」と教えてくれた。実は昨日行ってきたというと、「日本人として勧めれるか?」と逆に聞かれた。もちろんお勧めしておいたが、日本を離れて長いため、私の「日本料理舌」が鈍ってきているのだろうか。日本人がマラケッシュに行く際は、是非立ち寄ってもらい、意見を聞きたいものだ。

2008年3月11日火曜日

エジプトと国連

まだまだワークショップのネタで引きずるが、ランチ時間に国連エジプトの駐在調整官・駐在代表のJ氏と話をする機会があった。彼は実は私のUNDPのジュネーブ事務所時代の上司でもある。

エジプトと言えば、もう中所得層の国に入っており、中東でもかなり近代的な国として知られている。こういった国での国連の役割は紛争中・紛争後の国とは異なってくる。国連内でも人によっては「中所得層の国などからは国連は撤退すべきではないか」という議論がある。確かに国連の限られた資源を有効に生かすためには、低所得国や紛争中・紛争後の国に集中した方がいいという議論はわかる。しかし中所得層の国になったからと言って開発問題はなくなりはしない。

その代わりに異なった開発のチャレンジが出てくる。インドネシアでもそうであったが、地方間の開発格差がエジプトでは大きな問題らしく(日本でもそうだが、、、、)地方自治戦略・執行の助けが大きな国連支援の柱だと言っていた。また、人権問題、女性の権利などなど国連として推し進めていくべきイシューが山積みらしい。ビジネスでもそうで、例えばトヨタのような世界規模で大成功している大企業も環境問題などの大きな課題を抱えている。「
成長」しても悩みは尽きないものだ。

2008年3月5日水曜日

戦略的国連支援

国連の様々な問題が指摘されて久しい。そのうちで最も重要な問題の一つが「戦略性」ではないだろうか。個々の国連機関のマンデートをよりどころに、様々な小規模プロジェクトが乱立するなか、限られた資金を最大限活用できるように国連全体としていったい何に集中をするべきなのかという議論が今までは希薄だった。

ピーター・ドラッカーによると、「戦略」という概念は元々軍事用語で、ここ数十年くらい前から徐々にビジネスの世界でも応用され始めたらしい。そしてこの概念が浸透するにつれて、経営方針をより「戦略的」にするための様々な戦略枠組が編み出され使われている。

いろいろ批判はされているものの、最も有名なのがマイケル・ポーターのものだろう。内部のビジネスプロセスにも範疇を広げたバリューチェーン分析も実際の会社でよくつかわれている。戦略コンサル会社のBCGも、ビジネスポートフォリオ分析の手法を編み出し、どのビジネスラインを強化すべきかを決定する枠組みを作った。

さて、この戦略性の議論は国連改革の一環として、やっと最近になって国連にも浸透してきているようだ。「国のニーズは何か、国連のマンデートは何か、他の機関が行えないことは何か、国連に実行能力はあるのか」といった、当たり前といえば当たり前だが今まで真剣な議論が行われてこなかった問題が徐々に議論されるようになっている。今回参加したワークショップもその一環。これに応じて国連でも、ビジネスで使われている「戦略枠組」が応用されるようになってきている。

今回のワークショップで、UNDPのシエラレオネで試した(以前UNDP東ティモールでも使ったことがある)戦略枠組みを紹介する機会があった。それが以下のもの。大したものではないが国連機関のプロジェクトポートフォリオを分析するには役に立つ。まず、プロジェクトのレレバンス(意義とでも訳すのか)と組織のキャパシティーを二つの軸にとり、その度合いに応じて既存のプロジェクトをマッピングする。

そして、この4象限のそれぞれに応じた対応策を導きだす。もしあるプロジェクトの意義が高いが、内部のキャパシティーにかける場合、組織強化のための投資を増加させる。もしあるプロジェクトの意義が低くなってきており、しかし内部のキャパシティーが高い場合は、アプローチを変えてプロジェクトを再定義する。などなど。そして、ポートフォリオが全体として右上の象限に位置するような対策を取る。以下のチャートを参照。


ところで日本の外交政策や開発援助方針の「戦略性」はどのように議論され、どのような「枠組み」が使われているのだろうか。関係者の方々に是非話を聞いてみたい。

2008年3月4日火曜日

紛争中・紛争後の国における国連の役割

今週の月曜日からエジプトのカイロで国連のワークショップに参加している。国連開発グループ(UNDG)が主催するもので、紛争中・紛争後の国で国連がどのように「1つの国連」として平和構築に関する戦略的支援を行えるかを議論するというもの。イラク、アフガニスタン、リベリア、パレスチナ、ソマリア、東ティモール、スーダンなどの国から、国連駐在代表オフィスでプラニングを行っている担当官が中心に集まった。国連機関からはUNHCRとUNDPが参加している。本部からはUNDG、OCHAそしてDPKOのスタッフが参加している。合計50人ほどの中級サイズのワークショップだ。

こういう会合は、各国国連代表者との情報共有は当然として、自分のモーティベーションを高めるのにもいい。国連の非効率性は様々なところで批判されているが、こういった国で働いている国連職員の士気は非常に高く、刺激を受ける。政治的、治安的な困難はあるが、やはり国連のPeace, Security and Developmentというマンデートを一番発揮できるところでもあり職員の自負もあるのだろう。

今日はワークショップの2日目。まず冒頭にイラクの国連事務総長特別副代表がイラクでのチャレンジを話してくれた。ヨルダンにいながら数千億円スケールのファンドを扱い、非常に難しい米国やイラク政府との折衝しながら行っている仕事を非常にダイナミックに話してくれた。

シエラレオネで一時一緒に働いた同僚の一人のFは今ソマリアの北部で働いているが、ワークショップの合間のコーヒーブレークに非常に生き生きとソマリアでの仕事を話してくれた。ソマリアといえば、かなり治安状況が悪く、仕事場も住居も同じ場所で厳重な警備がつねに張りめぐらされており、外にでるにも警備のエスコートが必要だというが、ダイナミックな仕事に非常に満足しているようだ。また、現在中央アフリカ共和国で平和構築基金の受け入れ準備をしている担当官ともシエラレオネでの経験を共有することができた。

ところで、今回の会合には、私以外にも、本部の平和維持局から日本人が2人来ており、日本人が合計3人参加している。ベテランUN職員の開催者は、「日本人はこういう紛争地域では今まであまり見掛けなかったが、最近非常に増えているようだね」と言っていた。日本政府が様々な制度を通じて日本人職員の増加をサポートしてきたが、徐々に結果が目に見える形で出てきているのかもしれない。

2008年3月2日日曜日

カサブランカ・モロッコ

フリータウンから飛んでいる飛行機は限られている。それでもロンドンとブリュッセルへ直行の便がありヨーロッパまではあまり時間がかからない。ケニア、ガーナへはケニア航空が通っている。もうひとつはモッロッコ航空でカサブランカまで3時間半の直行便がある(出発は夜中の3時半でかなりきついが)。

今回のエジプト出張で、色々なフライトを探したが、結局カサブランカ経由にした。一番都合のよい乗継便が満席だったため、カサブランカで一泊することになった。せっかくなので少し町に出てみた。

まず感じたのは、開発の度合。比較するのもなんだが、同じアフリカ大陸にあるとはいえ、シエラレオネとは大違いだ。道路は整備されており、高速道路もある。公共のバスも走っている。組織化されたPetit Taxiと呼ばれるタクシーもたくさん走っている。街中はノキア、IBMなど大手外国企業のオフィスが並ぶ。オフショア企業経営の学校も見かけた。フランス企業のコールセンターなどを請けおっているだろうか。この国の人件費が安いとも感じなかったが、、、。(ところでシエラレオネでイギリス企業などのオフショアリングができないのだろうか、、、タイムゾーンも近いし、、)




街角にはフランスの影響を受けたカフェが並んでいる。ヨーロッパ的な建物もあり、アラブ的な建物もあり面白いバランスだ。メッカの次で世界で2番目に大きいとされるとされる宗教建築のモスク、ハッサンIIを見た。壮大なスケールの建物で、900億円ほど建設にかかったそうだ。シエラレオネの国家予算の1.5倍程だ。この国にはそれ程経済的余裕があるということか。










モロッコの食事も食べてみた。モロッコ料理の評判は聞いていた。インドネシアにいたときもお気に入りのモロッコ料理レストランがあった。しかし驚いたのはモロッコワイン。今まで実は聞いたことがなかった。イスラム教の国なので、アルコール類なあまり期待していなかったが、これが結構いける。海外に輸出できるレベルだと思うが、なぜあまり見たことがないのだろうか、、、。 









それからモロッコのビールも飲んだ。カサブランカという銘柄のもので、これもおいしい。イギリスのニューカッスルエールのような味がする。

私自身、色々な国に行ったと思うが、アラブ圏はほとんど知らない。まだまだ勉強することが多い。