サマンサ・パワー氏の近著、Chasing the Flameを読んだ。レバノン、ボスニア、コソヴォ、カンボジア、東ティモールなどの最前線の国で国連職員として30年以上働き、2003年8月19日に、イラクの国連オフィスで、自爆弾によって死亡した、セルジオ・デメロ氏の政治的伝記だ。脚注を含め600ページにもなる大著。莫大な量の資料と、多くのインタビューによる緻密なリサーチを元にし、非常に臨場感がある。前国連事務総長、コフィ・アナンの伝記、The Best Intentionsと比べても各段によく書けているだろう。ケニアからフリータウンに戻る飛行機内で、ほぼノンストップに9時間読み続けた。
デメロ氏の人間的なチャームと外交スキルについては、国連内での評判は噂程度には聞いたことがあった。特に、私が東ティモールで仕事を始めたのは彼が去った直後の2002年8月だったが、すでに多くの同僚が彼を懐かしがっていたのを覚えている。本の中で出てくるあるアメリカ人外交官によると、デメロ氏は「国連だけではなく、国際外交界の中で最も優れた人材」で、「国連がどのように存在でき、どうあるべきかを体現している人物」だったという。 (P402)
体に「国連色の青い血」が流れると言われるほどの国連の「信者」で、いつも国連憲章を持ち歩いた。常にフィールドを活動の拠点とし、国連の後輩たちには「常にフィールドで仕事をしろ。それしかない。私はそうして働いてきた。現場にいることに意味がある。それ以外は全く重要でない」とアドバイスをする。(P222) 「人権を侵害」したクメール・ルージュや、セルビア政府の高官と近づきすぎと言われながらも、彼らを巻き込まなければ平和は達成されないと信じ、積極的に交渉を持ちかける。
なぜ私自身、この世界に入り込んだのかを再確認させてもらった。是非日本語訳が出て、日本の多くの人に読まれるとを願う。
2008年8月30日土曜日
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2 件のコメント:
かなりお奨めそうなので、これ、早速買ってきました。まだちょっとしか読んでませんが、非常に綺麗な英語ですね。これだけつっかえずに読める綺麗な英語はなかなかあったことがないです。読みきれるかわかりませんが、やってみます。ご推薦、ありがとうございやす。
そうですね。読み終わったらぜひレビューをブログによろしく。
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