今まで、HIV/AIDSについてちゃんと勉強をしたことも、仕事をしたこともなかったのですが、シエラ・レオネに来て、上司から新しいHIV/AIDSに関するポートフォリオを立ち上げてくれと言われ、この新しいテーマにしばらく取り組んでいます。ちなみに、シエラレオネはHIV/AIDSの感染率が1.5%とまだ低いとはいえ、国境を接したリベリアやギニアでは感染率がずっと高く、これらの隣国との間での人の流動が大きいので、ここでしっかり対策を打たなければ感染率が増加するといわれています。
このHIV/AIDSの分野は、おそらく開発業界でも一番多くの機関が絡んでいるところで、ユニセフ、WHO、UNAIDS、UNFPA、世銀などなどが独自の分野でそれぞれの仕事をしています。これにNGOなどを加えるとおそらく各国で最低10機関がHIV/AIDSに関する何らかの仕事をしていることになります。
それほど多くの機関がこの分野で仕事を仕事をしていることもあり、3っつのOne (Three Ones)という原則がドナーと政府の間で合意されたほどです。これは各国で一つのHIV/AIDS国家戦略をもち、一つの国家調整機関のもと、一つのモニタリング・評価システムを持つ、というHIV/AIDSの分野での援助の効率性を向上させる原則です。
ではUNDPが介入する意義はなんでしょうか?公式見解としては、HIV/AIDS分野のガバナンス強化と、HIV/AIDSのイシューと戦略を貧困削減戦略文書(PRSP)に反映させるということになっています。この制限に基づいて、我々もシエラレオネの国家エイズ事務局とUNDPとしてどういった援助が可能か、過去半年ほど議論してきました。
そのうちの一つとして、各県ごとのHIV/AIDS Risk Indexなるものを作り、エイズ対策をより戦略的にしようというアイデアを温めてきました。今までは単に県ごとの感染率をトラックしているだけでしたが、それだけではなかなか戦略を立てにくいし、どの県に予算をより配分し、どのような支援をすべきかがあまりよくわかりません。また、2004年から地方分権が始まり、県政府のHIV/AIDS対策をとる能力強化が大きな課題となっていることもあり、以下3つを掛け合わせてインデックスを作ることを考えています。
- 感染率
- 県民のHIV/AIDSに関する知識
- 県政府のキャパシティー
14の県で最もリスクがある4つの県をハイリスク県、次の5つをミディアム・リスク、最後の5つをロー・リスクと分類し、それぞれ異なった対策を施そうというもの。国家エイズ事務局もこの案に結構乗り気になっており、次はメソドロジーを精査して実際にインデックスを計算してみることになっています。同時に、似たようなことをどこかの国で行ったかどうかを調査してみようと思っています。
アプローチ的には、経済指標で計っていた‘開発’の概念を、UNDPが保健・教育の視点を組み合わせ、人間開発指数として定義し直したり、企業のパフォーマンスを、従来利益やRoIで計っていたのを、バランス・スコアカードなどが教育への投資、内部プロセスの効率性、顧客の満足度を加えてより包括的にとらえなおしたことに通じるものがあると勝手に考えております。自分でもなぜだか分りませんが、このような定量分析を、ガバナンスやパフォーマンス管理などのソフトな開発分野に持ち込むことには個人的に変な執念を抱いております。
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