2008年11月17日月曜日

「岩倉使節団」は今の途上国でも有効か?

開発援助に従事して以来、何かと日本の明治維新以来の発展を開発援助の文脈で考えることが多くなった。すでに当時でもかなりのレベルの経済的、政治的、社会的な発展を遂げていた日本と現在の途上国をそのまま比較はできないが、それでもいったいどうやってこれほどの成長を遂げたのかはより理解するに値するだろう。

以前、岩倉使節団についての本を読んで、団員の綿密な分析や、カルチャーショックの描写を興味深く読んだが、もう一度追体験をしたくなって、田中彰氏著の「明治維新と西洋文明:岩倉使節団は何を見たか」という本を買って読んでみた。(以前買った本がどこにいったか分からないのもある)

団員46人に加えて、留学生などの付随者を入れると100人を超える大規模な「勉強の旅」で、約2年間でアメリカ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、ロシア、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、イタリア、オーストリア、スイスという国々を周る。道路、鉄道、上下水道、郵便システム、港などのインフラ状況から、民主主義制度、ジャーナリズム、貿易、病院、博物館、公園、森林保護など、多岐にわたる分野を手分けして観察する。たとえば鉄道に関しては、国営がいいのか、民営がいいのか、それとも国営から民営に移行するのがいいのか、など非常に具体的な観点から観察しているのが見受けられる。さらに新聞の流通などについても、種類、流通数を正確に数字で把握している。かなりの下準備をしたと見られ、どの国でどの工場を見学するかなど緻密なプランがあったようだ。当時の状況から考えても、このような大規模な使節の派遣には大きな費用がかかったと思われるが、団員の分析の深さと、使節団の参加者がそのご様々な分野での要職を占めていることを考えると非常に良い投資だったと思われる。

さて、このような「スタディー・ツアー」は現在も開発援助でよく使われる手法だが、これほどの規模の使節団を例えばシエラレオネ政府高官を対象にするのはかなり難しいだろう。また、援助側も、受け入れ側も岩倉使節団のような国の発展を思い真摯に学ぶ切迫感・真剣さがなければ意味がないだろう。

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