2008年9月4日木曜日

国際機関の「顧客」と「株主」

民間企業のビジネスモデルで、大きくいって、2つの重要なグループがあると思う。一つめは顧客。そもそも、会社がもたらす製品・サービスに対して対価を払うグループ。もうひとつが、株主。会社が提供する製品やサービスにたいして投資を行い、ビジネスを可能にさせるグループ。企業はこの二つのグループのInterestを満たすように行動様式が決定されるといっていいだろう。

一方、国連の開発援助はどうか。クライアントに当たるのは、受け入れ政府、しいては受け入れ国の国民。そして、大株主に当たるのは、先進国政府(そして、ガバニング・ボードの国々)。彼らの政府開発援助の資金によって、クライアントに対するサービスが提供される。二つのビジネスモデルで大きく異なることは、国連のビジネスモデルの場合、クライアントがサービスに対する対価を払わない(払えない)ということ。この一つの違いで、民間と、国連のビジネスモデルのダイナミクスが大きく変わってくると思う。

国連モデルでクライアントがサービスに対価を払わないということは、いくらクライアントの利益を第一に考えると建前があっても、資金繰りの問題がいつも脳裏に残り、お金を潤滑に得るためには、時として資金源としての先進国の利益や考えを大きな要素として扱わなければいけない。同じ理由で、ドナーからの資金を運用する立場にある国連機関は、クライアントである受け入れ政府・国民に対し、金銭的に有利な立場に立つという政治力学が生まれる。

国連として、多くの内部改革が行われ、それなりの成功を収めているが、この根本的なビジネスモデルを理解しなければ、なぜ国連という機関が、今のように動いているのかを理解することが難しいのかも知れない。民間のモデルを国連に適用するといことは、大いに可能で、実際に多くの成功性があるが、この基本的は差異を理解することにより、民間モデルの可能性と限界が分かるのかも知れない。

3 件のコメント:

naoto さんのコメント...

僕は実はこれ逆だと思ってます。逆にしないと指摘されている通りお客が金を払わないという点でちょっとした矛盾が起こります。株主さんは総会や理事会で票をくれる国々、まあ国連の場合は圧倒的に途上国。お客さんはお金を払って国連に関わって何かよいことをした気持ちになりたい方々、まあドナーの方ですね。それも先進国だけでなく、個人、途上国を含めたあらゆるお金をくれる方々です。お客さんのニーズを満たしながら、途上国よりの株主さんの利益というかBENEFITを最大化するという見方はどうでしょう。

中村俊裕 さんのコメント...

なかなか面白いですね。先進国が「買う」に値する「途上国開発サービス」を提供するというロジックですか。この考えでは、途上国の政府や人々はどういう位置になるのでしょうか。AFの議論を思い出しますね。あれ、あの後進んでいるんでしょうかねえ?

naoto さんのコメント...

お金で買えない開発サービスを提供するのに必要な材料を提供するサプライヤーさんといった位置づけはどうですか?国やコミュニティーレベルでの政治的なサポート、国の開発戦略など、そういった材料というか基盤がないと開発サービスの提供ができないわけではないけれども難しくなるものってありますよね。自動車工場の工員さんがガラスやねじがないと車を組み立てられないように、専門家やボランティアなどの開発仕事をするもそういったソフトな面の条件がないと仕事ができない。そういう位置づけにすると、政治的動乱が起こったときの対応も少し変わってるのではないかと思います。無理ありますかね。AFは何も変わってません、そのうちプロジェクトマネージャーが来るらしいですが。