2008年2月27日水曜日

「ゴムのように柔軟」な時間の概念

日本人は時間に正確なのは有名だ。友人宅に呼ばれても時間どおりにきっちり到着する。私もこの文化で生まれ育ち、22歳に初めて海外で暮らし始めたときは、日本と国外でのこの時間の概念の違いに驚かされた。ヨーロッパでパーティーに8時に呼ばれて8時に到着する人はほとんどいない。10時ごろから人が集まり始めるのが普通だ。

さて、この日本との時間の概念に違いは、パーティーだけでなく仕事の面でも現れる。シエラレオネでは特にこの時間の概念が非常に「柔軟」だ。そういえばインドネシアもそうで、柔軟さを指して「ゴムの時間」とも言われている程だ。

今日も3時にミーティングをする合意していたにも関わらず、一番大事なメンバーがいつまでたっても現れない。電話をしてもつながらない。仕方なくミーティングを始めたが、彼がいないため、決定ができない。4時半に電話がかかってきて、「ああ、実は他のミーティングに参加することになったから」と。そのくらい電話で連絡せーよ!っと思ってしまった。しかし、これが毎日のように起こる。ミーティングの時間の使い方も無駄が非常に多い。

これが毎日いろんなところで起こると、生産性が非常に低下する。ODAをいくらつぎ込んでもこういったところでいろんなことが滞る。と、ここまで書いたが、最初にアフリカに来た直後に、こういった話を同僚としていた時、それは AWA - 'Africa Wins Again!'だといって笑い飛ばしていたことを思い出した。そういったポジティブでかつ忍耐強い対応がなければこういう仕事は成果が出せないのだろう、、、。

2008年2月24日日曜日

開発プロジェクトと管理にかかる費用

ODAの効果が最貧層まで届くにはどうすればよいか。これはODA始まって以来議論されていることだろう。現在でも、援助の効率性に関するパリ宣言、プロジェクトマネジメントの方法論確立、南々協力、知識管理などなど、さまざまな形で議論に上っている。

最近私が気になるのが、プロジェクト予算の中での管理費の割合。この場合管理費とは、プロジェクトマネジメントに関する費用と考えていただきたい。開発援助の世界では、この管理費を必要最小限におさえ、予算の大部分がプログラムの実際の活動に使われるべきだという暗黙の了解がある。そして、管理費を最小限に抑えるということが、国際スタッフではなく、ローカルスタッフを最大限使い、かつ数も最小限に抑えるという。

しかし、どうもこの傾向が行き過ぎているような気がしている。プロジェクトの目標と達成するためには、どうしてもしっかりした管理体制が不可欠だ。ここに投資を渋ると、あとがガタガタになる。10の結果を出そうとしても、3の結果しか出ないことにもなりかねない。私自身、管理体制がガタガタのプロジェクトをいくつも見てきた。

最近視察させてもらった他のドナーのプロジェクトは規模が小さいが、5人もの国際スタッフを雇って、万全の体制を取っている。お金が援助の対象に落ちないという批判は容易に受けるだろうが、私は、管理体制の強さに関心した。管理費を削りすぎてもいけない。匙加減が大事だ。

2008年2月23日土曜日

海外出張と休暇

3月の初めから一週間、ワークショップに参加するためにエジプトのカイロに出張する。紛争中・紛争後の国で、国連全体として、どのような計画づくりをすべきか、というのがテーマ。アフガニスタン、リベリア、スーダン、イラクなどのオフィスでUNDAFなどの計画調整系の仕事をしている担当官が主に参加する。

参加者のリストを見てみると、何人も知っている名前がある。JPO時代の同期や、シエラレオネの元同僚、ジュネーブ時代の元上司などなど、UNDPも6年目にもなると、色んなところで知り合いに出くわすことが多くなる。久し振りの再会が楽しみだ。3年間エジプトで仕事をしたイタリア人の同僚によるとおいしい日本レストランや、タイレストランもあるらしい。

エジプトでの一週間の後は、モロッコで一週間の休暇を取る予定だ。中東アラブ文化圏は私自身ほとんど行ったことがないので楽しみだ。新たな発見ができるだろう。

2008年2月22日金曜日

途上国内の「知識管理」

シエラレオネ北西部に位置するカンビア県での3日間の出張を終えて、金曜日の午後にフリータウンに戻ってきた。少し経緯を説明しよう。

地方分権法が2004年に制定されてから、それぞれの県がドナーの支援を受けながら様々な試みで地方分権を促進しているが、県同士で経験を共有する機会があまりない。さらに、UNDPがケネマ県で行っているプロジェクトと、JICAがカンビア県で行っているプロジェクトの目的に共通項があるのに、お互いの知識共有ができていない。いつもお世話になっているシエラレオネJICAの代表者と何となくこの二つの問題意識について話していた時に、じゃあ、レッスン共有をするワークショップができないかいう話になった。これがちょうど去年の10月頃だったと思うので、4か月後に実現したことになる。そして、ワークショップ自体も大成功に収まったと思っている。日本との電話会議を含め、何度もミーティングを行い、やっとここまでこぎつけた。関係者各位に感謝したい。

南々協力について以前書いたことがあるが、この国内での知識共有もその南々協力の延長だろう。いや、これは南々協力よりもっと進んだ形なのかもしれない。ガーナやボツワナの経験を、シエラレオネでどう生かそうかというよりも、シエラレオネのカンビア県の経験を、ケネマ県でどう生かそうかというほうが、地元の人たちにとってはよりしっくりくるはずだ。似たような社会経済状況で同じ法律を施行しようとし、同じような問題に直面する。ある県ではこのような対応をしていてうまくいった。またある県ではこのような対応をして失敗した、などの経験を共有することは、たとえば一億円の援助をすることにも匹敵するのではないか。

ここまで書いて、以前少し一緒に働いたUNDPの同僚が南米で行った取り組みを思い出した。南米での地方分権の経験を共有するためのワークショップを開き、大成功させたのだ。CNNで中継されるほどの一大イベントになったらしい。内容的にも、かなりよかったようだ。また、国連インドチームは、ソリューション・エクスチェンジと題したEメールベースの議論フォーラムを設け、MDGのゴールなど毎に政策議論を行い大きな成果を得ている。このような、フェイス・トゥー・フェイスとバーチャルを組み合わせた知識管理は今後も開発分野で大きな可能性を含んでいる。やはり開発援助はお金ではなく、アイデアではないだろうか。

2008年2月17日日曜日

開発援助とイノベーション

莫大な資金が日々発展途上国に流れているにも関わらず世界の貧困問題は深刻化し続けているはなぜだろうか。
その理由の1つにイノベーションの欠如があげられるだろう。民間部門で様々な技術革新が起こり、新しい商品やビジネスプロセスが次々と生まれている一方、貧困削減に対するアプローチは何十年もほとんど変わっていないように思える。 年功序列的な人事制度を含めた公共事業的カルチャーが、狭い「開発専門家」集団から出てくる「ありきたり」のアプローチの使いまわしを助長しているのではないか。

とは言え、変化の遅い開発援助の世界でも、少しずつ革新が見られる。途上国向け廉価コンピューターを使った教育プロジェクトを始めたMITやインテル、オンラインでクレジットカードをつかって一般個人から途上国の企業家にマイクロファイナンスを行う仕組みを作ったKiva.orgなど、最新の技術やアイデアを駆使して貧困問題解決に貢献する社会企業家が徐々に表れている。
さて、このような起業家は国連などの大組織では生まれてこないのだろうか?インターネットブームの際、多くの優秀な人材とプロフィットがベンチャー企業にながれたことに危機感を募った大企業は、様々な仕組みでこの流れを逆転させようとした。その一例として、「社内起業家-Intrapreneur」という制度がある。これは、やる気のある起業家に対して、大企業から独立せずとも、革新的なビジネスを起業できる仕組みを提供することを指す。日本ではリクルートやミスミなどの取組が有名だ。さて、国連組織でこのような制度を確立することは可能だろうか?小規模かつアドホックにこういう仕組みが出てきているのは事実だが、これを組織カルチャーの紺本原理にまで昇華させるには難しいか、、、?

2008年2月16日土曜日

今後3年の方向性を話し合う会議

14日木曜日に、今後3年間の方向性を決める‘カントリー・プログラム・アクション・プラン’(CPAP)を議論するためのワークショップを行った。財務経済企画省の副大臣をはじめ、政府、NGO、ドナーの代表者が80人以上集った大きなイベントとなった。

私はシエラレオネに赴任以来、このプロセスの内部調整にかなり時間を費やして来たので、今回のワークショップが成功したことに、かなりほっとしている。参加者からの評価もまずまずで、ひとつ山を越えたという感じ。インドネシアでも政府との調整を含めた同じCPAPのプロセスを一回経験している。国連改革ということで、ユニセフとUNFPAとも合同でCPAPのレビュー企画し、実行までこぎつけた。ここシエラレオネではまだまだ国連機関内の連携が強くなく、合同のCPAPレビューを行うにはまだ時間がかかりそうだ。

2008年2月9日土曜日

規模の拡大に伴う経営基盤強化の必要性

選挙支援と平和構築基金系のプロジェクトのため、オフィスのサイズが非常に大きくなった。2005年には$8.3ミリオンだった支出が、2006年には$12ミリオン、去年は$41ミリオンにもなった。3年間で5倍にも膨らんだことになる。

よって、スタッフの数も増え(必要人数には追い付いていないが、、)もっと大きいオフィスへの移転を計画している。ビーチ沿いのオフィスを見つけ、去年の半ばからデザインや、機関ごとのスペースの割り当てなどを話し合っているところだ。実は今年の初めにもう移転している予定だったが、いろいろな理由でかなり遅れている。事実、新しく加わったスタッフにスペースがもう足りなくなっており困っている。

そういった状況のなか、先日、上司がある大臣から電話を受けた。ビーチ沿いは、新政府の意向で観光用に開拓したいので、オフィスは立てないで欲しいということだった。しかし、このオフィス、ずっと前から確保し(実は安全上の理由で、別のオフィス候補をけってここに至ったという背景がある)いろいろな障害を乗り越えここまで至った。今から新しいところを探すとなると、今年中の移転は難しくなる。というわけで、この件はまだ政府と交渉が続いている。

ベンチャー会社が成功して、急激にオフィスが大きくなり、同時に、人事、オフィス管理、コミュニケーション、対外PRなど、経営上の基本を再定義しなおす必要に迫られた状況に似ている。我々も、採用し、組織構成、トレーニング、調達能力、財政資源の配分の見直しが必要となっている。ここは経営陣の能力が試されるところだ。できる限りのサポートをしたい、、、。

2008年2月8日金曜日

香港とスリランカと繋がる

今日は、2人の友人と久し振りにスカイプで話した。

一人は香港在住のRで、ウェブカメラで2人の子供も登場した。彼はイギリスと中国のハーフだが、奥さんが香港出身。中国の新年祝いでこれから花火を見に行くと言っていた。彼とは7年前に東京の同じ会社で知り合って以来仲良くしている。私と同じくらいの時期に会社に入り、同じ時期に会社を辞めた。以来投資銀行で働き、今ではマネージング・ダイレクターなる肩書きをもっている。なぜか彼とは気が合い、東京時代にはよく恵比寿あたりで飲んでいた。その後、私がインドネシアにいる時も、彼が出張でジャカルタに何度か来た。

もう一人は、スリランカ在住のAで、東ティモール時代からの友人。よく働くイタリア人で、すごく人もいい。しばらく音信不通だったが、久し振りに話せてよかった。仕事上のチャレンジやスリランカでの生活を話してくれた。ビーチがすごく綺麗らしい。ティモール時代の思い出話もした。

数年おきに途上国をぐるぐるまわる生活をしていると、こういったバーチャルでの友人ネットワークが精神衛生上不可欠だ。今日はそのことを再確認した。

2008年2月3日日曜日

引っ越しするかもしれない

今年4月いっぱいで今の家の契約が切れる。今の大家はあまりちゃんとアパートまわりの管理をしてくれないので、バックアップとして別の家を見に行ってきた。ヒル・ステーションから10分ほどのところで、これも丘の上の高級住宅街(?)にある。門をはいると傾斜した道が庭を突き抜けて家までつながっており、びっくりするくらい色々な植物が植えてある。ちょっとした高級リゾートホテルの庭のようだ。広さにしても、まあ日本では考えられないほどの大きさ。

とはいえ、これはロンドンでの弁護士活動を引退したシエラレオネ人の夫婦が住んでいる家で、ゲスト用の離れの建物が空いているとのこと。この夫婦が住んでいる家もシエラレオネでは見たことのないような立派な家。庭の反対側にはプールもあり(水は入ってない、、、)、そこからフリータウンの町が一望できる。家の回りにベンツが3台駐車してある。

離れの家自体も、ゲスト用とはいえ、まあまあの大きさ。150平米ほどあるだろうか(日本の標準では大きすぎるが)。ベッドルームが2つ、まあまあ大きめのリビングルーム。台所も日の当りがよい。

問題は家賃。一か月1500ドルと言ってきたが、今のところと比べるとだいぶ小さく、広さの割には少し高すぎる。1200ドル位まで下げれないか交渉中。相手がどう出てくるだろうか、、、。

2008年2月2日土曜日

開発援助における評価-客観評価と自己評価どちらが有益か

開発援助の世界では、評価(Evaluation)が不可欠だといわれる。確かに税金を使って行っている支援が予定通り進み、今後の教訓をくみ上げるプロセスの必要性は大いにある。しかし、今までどうも、役に立つような評価報告書を読んだことがない。なぜだろうか、少し考えてみた。

  1. そもそも、計画フレームワーク、数値目標がはっきりしていないため、何をどう評価していいのか不明
  2. 質の高い評価コンサルタントがあまりいない
  3. 評価を行うタイミングがわるい
  4. 自己評価が軽視されている

お互い関連しているがこの4つが思い浮かんだが、ここでは特に2-4番目の要因について書いてみたい。

評価を行う際、まず開発援助機関では、Terms of Referenceを書いたら、評価者を探すプロセスを始める。これは大体、開発業界で長く仕事をしている独立のコンサルタントが多い。「客観性」を担保するため、ここでは、当該プロジェクトに関わっていない第三者を選ぶことになる。当事者が自分のプロジェクトを評価することには'Conflict of Interest'があるからだ。しかし、私の経験では、この第三者の質が往々にして悪く、プロジェクトの理解も浅く、もうプロジェクトが終わり当事者が他の国のプロジェクトにかかわっていたりして、結果として評価報告書の内容が全く使えないことが多い。

評価の客観性の大切さはよくわかる。しかし、この「客観性」を強調しすぎ、自己評価が軽視されるいるのではないか。軍隊や医療の世界ではAfter Actions Reviewといって、イベントごとに何がうまくいき、何がうまくいかなかったか、そして、それはどうしてか、今後の教訓は何かを議論することが定着しているという。これは当事者が出来事を振り返って率直に自己反省をするプロセスだ。このようなプロセスを開発業界にも定着させ、当事者による自己評価を強化できないか。第三者評価を放棄するのではなく、教訓が実際に当事者の骨となり肉となるように自己評価と両立させるのだ。

以前にも言及したマレーシアの元官僚ともこの意見について話したところ、同じ理由で「マレーシア政府の評価プロセスは、第三者を使うことを放棄した」といっていた(ただ、ドナーが支援しているプロジェクトについては第三者評価がいまだに続いている)。

Objective evaluation or self reflection, that is the question...

2008年2月1日金曜日

体に気をつけよう

ここ最近体の調子を悪くしている人が周りに多い。日本人の同僚の一人がマラリアにかかり、ここ数週間ふらふらしながら仕事をしていた。シエラレオネ人の同僚も、体調を崩し3か月も休んでいた。数か月前に短期ミッションでシエラレオネに来ていたイタリア人も、よくわからない虫が脚の皮膚の下に住みつき、未だに除去できていないとメールで書いてきた。腫れるは痒いはで大変だそうだ。私も首の回りの皮膚が真赤に荒れて、オフィスのクリニックに行くと、ケニア蝿とかいうものに咬まれたのではと言われた。今ではだいぶ回復したが、、、。

アフリカの病気を侮ってはいけない。体に気をつけよう。