2008年3月5日水曜日

戦略的国連支援

国連の様々な問題が指摘されて久しい。そのうちで最も重要な問題の一つが「戦略性」ではないだろうか。個々の国連機関のマンデートをよりどころに、様々な小規模プロジェクトが乱立するなか、限られた資金を最大限活用できるように国連全体としていったい何に集中をするべきなのかという議論が今までは希薄だった。

ピーター・ドラッカーによると、「戦略」という概念は元々軍事用語で、ここ数十年くらい前から徐々にビジネスの世界でも応用され始めたらしい。そしてこの概念が浸透するにつれて、経営方針をより「戦略的」にするための様々な戦略枠組が編み出され使われている。

いろいろ批判はされているものの、最も有名なのがマイケル・ポーターのものだろう。内部のビジネスプロセスにも範疇を広げたバリューチェーン分析も実際の会社でよくつかわれている。戦略コンサル会社のBCGも、ビジネスポートフォリオ分析の手法を編み出し、どのビジネスラインを強化すべきかを決定する枠組みを作った。

さて、この戦略性の議論は国連改革の一環として、やっと最近になって国連にも浸透してきているようだ。「国のニーズは何か、国連のマンデートは何か、他の機関が行えないことは何か、国連に実行能力はあるのか」といった、当たり前といえば当たり前だが今まで真剣な議論が行われてこなかった問題が徐々に議論されるようになっている。今回参加したワークショップもその一環。これに応じて国連でも、ビジネスで使われている「戦略枠組」が応用されるようになってきている。

今回のワークショップで、UNDPのシエラレオネで試した(以前UNDP東ティモールでも使ったことがある)戦略枠組みを紹介する機会があった。それが以下のもの。大したものではないが国連機関のプロジェクトポートフォリオを分析するには役に立つ。まず、プロジェクトのレレバンス(意義とでも訳すのか)と組織のキャパシティーを二つの軸にとり、その度合いに応じて既存のプロジェクトをマッピングする。

そして、この4象限のそれぞれに応じた対応策を導きだす。もしあるプロジェクトの意義が高いが、内部のキャパシティーにかける場合、組織強化のための投資を増加させる。もしあるプロジェクトの意義が低くなってきており、しかし内部のキャパシティーが高い場合は、アプローチを変えてプロジェクトを再定義する。などなど。そして、ポートフォリオが全体として右上の象限に位置するような対策を取る。以下のチャートを参照。


ところで日本の外交政策や開発援助方針の「戦略性」はどのように議論され、どのような「枠組み」が使われているのだろうか。関係者の方々に是非話を聞いてみたい。

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