2008年3月30日日曜日

The Bottom Billion -最貧の十億人

国際的には一人当たり、1日1ドル稼ぐかどうかが貧困を決める基準となっている。そして、世界人口の6.7人に1人、つまり世界中で約10億人にものぼる人がこの最貧困層に当てはまると言われている。ちなみに日本総人口の約8倍にもあたる。相当な数だ。私の働くシエラレオネでは人口の57%にもあたる人(約360万人)がこの層にあてはまる。さらに、教育機会と公衆衛生を考慮に入れた国連開発計画の発表する人間開発指標でいうと、世界で最も貧しい国ということになっている。 

オックスフォード大教授ポール・コリエーの最新本「The Bottom Billion」では、このような層に開発援助の焦点を置くべきだとも言っている。ターゲットをはっきりさせ、限りあるリソースを集中させるという彼の議論は納得しやすいし、私も同意する。さて、平和構築の現場で、これはどのようなことを意味するのだろうか。私の住む家で、当初お手伝いさんとして雇っていた「ペムダ」という女性を例に考えてみる。

ペムダはもともとシエラレオネ到着直後にお世話になったギニア人のドライバーの紹介で雇った女性だ。後に彼の妹と判明したが、、、。彼女は、2人の子供とともに、フリータウン中心街のゴミ捨て場の近くのスラムに住んでおり、この十億人貧困層に当たる女性だ。夫はギニアで出稼ぎをしている。2人の子供を学校に送る収入も無く非常に貧しい生活をしていたが、我々の家のお手伝いさんとして来てもらうことになって、月100ドルの給料を渡していた。この収入は大卒のシエラレオネ人の公務員の初任給が月70ドルにも満たない国で、破格の給料だろう。この仕事を得た後、彼女がどのようにお金を使うのか非常に興味を持って見ていた。皆さんは、彼女がこの100ドルを何に使ったと思いますか?
答えは、携帯電話、美容院そして新しい服。友人とのおしゃべりができるようにし、髪を整えて新しい服で、おしゃれな気分を味わうことに決めたようだ。これには少し驚くとともに、自分の人間心理とでもいえばいいのか、それに対する浅い理解を知った。

このお金の使い方は、子供を学校に送るとか、トタン屋根の家をもう少し住みやすい家に建て替えるとか、小規模事業を始める資金に充てるといった、開発業界の人々がアドボケートするようなお金の使い方ではない。携帯を購入して、おしゃれになったからといって、彼女の将来の生活、そして、子供たちの生活が向上するわけではないだろう。こういった人々が、どのように貧困層から抜け出すことができるのか?雇用を与えたからといって、最貧層から抜け出すことができても、将来彼女自身、そして彼女の子供が今後生きる上での選択肢が増えるわけではないだろう。
こういったペムダのような人々が、どのように人生における効率的な投資を行うようにもっていけるか。どのように「向上心」とでもいうのか、よりよい生活を送ることができるような意志をもつように出来るのか。最貧層の人々の「こころもち」を改善すること、それが最重要課題ではないだろうか。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

The Bottom Billion、僕も読みました。アフリカの最貧国がターゲットでしたが、アフガニスタンに当てはめながら読んでみました。政策論点の部分では、今まで当然と考えられていた政策の盲点を突くような話もありかなり参考になりました。援助関係者、特に最貧国で働く援助関係者の必読アイテムかもしれません。

中村俊裕 さんのコメント...

常に、アンテナを張り巡らし、新しいアイデアを吸収することは大事ですよね。アフガンでのインプリケーションについてまた教えてくださいね。