2008年4月19日土曜日

‘開発援助病'

世界の貧困問題を解決するという使命感に燃えて開発援助の世界に入った人は多いだろう。私もその一人だ。電気や水の通っていない家で、ゴキブリ、ネズミや蚊と格闘する生活をしながらも、クライアントである政府の人たちに仕事を感謝され、国の発展に対するインパクトが少しでも出ると、「ああ、この仕事をしていてよかったなあ」と思える。

しかし、実際の開発援助の世界はそれ程単純ではない。公共のためとはいえ、どこの世界とも同じで、様々な個人的利害が絡まることが多い。例えば現在、新しい議会を援助をするために各ドナーが競って国会議員に対するトレーニングを行っているが、この国会議員が、トレーニングに参加するためのインセンティブをよこせと言っている。つまり、トレーニングに「行ってあげる」から、その褒美としてお金をくれということだ。ドナー側としては、国会議長からのリクエストに応じて、国会議員が自分の仕事がきちんとできるようにODAを使ってトレーニングを行っているにもかかわらず、それに対して、あたかも頼まれてやってあげているというような姿勢で、お金をくれと言うのだ。これはどうもおかしい。この事例は先日のドナー会合でも問題となり、ドナーとしての立場をはっきりさせようということになっている。

こういった、開発援助の仕組みに慣れ切って、そこからできる限り個人的利益を享受しようという行動を、'開発援助病'と呼べるだろう。治療薬はあるのだろうか。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めて、政府の方々を集めた会議に調整見習として参加した際、このような仕組みがあることを知りました。

なんでだろう

と思い、非常に上司へ反発してしまいました(何も知らないOJT時でしたので)。
それは事の始まりであって、「○○は払っているのに、××は払わないのか」「今日の会議にお昼は出ないのか」とか、そんなやり取りが日常的に行われていますね。

残念ながら、彼らへ支払われるお金の多くは私蓄を潤すと考えられます。援助関係者もそれを認識していると思います。
でも、そのスパイラルはもう世界的に固定化され、新しい若手の方の時代になったから覆せるもの、というものでもないと思います。

非常に短絡的ですが、ドナー全員が、ある日を以て、支払を一気に止める、という荒治療が、私の未熟な頭で考えられる唯一の策です・・・
もうモラルで説き伏せられる時期は逸していると思うので。

中村俊裕 さんのコメント...

りかさん、いつもありがとうございます。私もこの課題についてはいつも憤りを感じます。

よく似た問題で、開発援助機関内でしっかり調整するべきもうひとつの課題は、DSAと呼ばれる日当の金額。

政府の人をを他の県から呼んである会合に参加させる場合、交通費、滞在費などを含んだ日当を出しますが、この金額がまずドナー間でばらばら。国がもう少し発展している場合は、現地政府の日当基準があり、どのような出張でも公務員は現地政府の日当基準に合わせるという取り決めがよくありますが、国連職員と一緒に出張をする場合、日当の格差が大きすぎて問題になることもあります。

さらに、あるアフリカの国では、政府の日当基準を国連の基準より高くしたと聞きました。こういうメンタリティーにはがっくりきますが、これも現実なのでしょうか。

匿名 さんのコメント...

援助の効率をあげるため、会議/研修出席の日当その他のインセンティブを与える、、、って必要悪ではなく、「悪」そのものだと考えます。援助の効率をあげているのではなく、毒薬を飲ませているのですから。「他の援助機関がやっているから、」というのは言い訳のすぎません。「研修をしました」「会議をしました」って報告書を書くための援助だったら、毒薬を飲ませる方法もあるのかもしれません。そんなのは援助機関側の「お役人」が考えることであって、「実費」以上の日当は「絶対に」出すべきではないと考えます。

と、つっぱってみました。個人的には常に戦っていますが、嫌われ、時間がかかり、援助機関側からも評価されず、「こんなに頑張らなくても」と思うこともありますが、、、絶対に実費以上の日当を出さないのは自分のプライドでもあると考えています。

ところで、そもそも、政府職員を相手にするから、こんなことで深刻に悩まなければならないのです。住民の力と監視能力を強化すれば、自ずと政府職員の甘い汁も少なくなります。「政府職員への研修」→「住民への裨益」から「住民のエンパワーメント」→「住民による政府職員の教育」への切り替え(=エンパワーメントアプローチ)をもっと多くの援助機関が取り入れて欲しいと思うのでした。

中村俊裕 さんのコメント...

さくらぎちょうさん、

コメントありがとうございます。私も個人的には「実費のみ」の理念に賛成です。

政府の能力強化支援をやっていてよく思うのが、国家機構だけを強化しようとしても、市民からのチェックがなければきちんとサービスを供給するインセンティブが小さいということ。 というわけで、「開かれた政府」プロジェクトも始め、政府の活動をオープンにし、市民から国家に対する「監視」を厳しくすることを狙っています。

http://peacebuildinglive.blogspot.com/2008/03/blog-post_3135.html