ヘンリーは、6人家族。4人の子供と奥さんと暮らしている。彼の月給は230米ドルで、残業手当を入れると300ドル。一人一日平均1.6ドルで暮らしていることになる。2007年の大統領選前の彼の家計はこうなっていた。
お米とそれ以外の食糧(パーム油、野菜、魚、塩、砂糖、調味料)で140ドル(47%)を支出。4人の子供を学校に送る授業料で、月33ドル(11%)。家賃が30ドル(10%)。年に一回だけ買う洋服の月平均コストは9ドル。料理に使う炭が8ドル。石鹸・洗濯石鹸・歯磨き粉が7ドル。公共の水が1.5ドル。選挙前は、彼だけの収入で月71ドル貯金することができた。ちょうど、残業手当全部が貯金に回ることになる。
さて、選挙後、2つの大きな変化が起こった。一つめは、食糧物価の高騰。もうひとつは、新政権が町に電気を通したこと。このため、ヘンリー家の収入と月間支出内訳が変わった。収入面では、ヘンリーの奥さんが公共の電気をつかって飲み物を冷やし、冷たい飲み物を売り始め、月80ドルの収入が増えたこと。一方、電気が通ったことから電気代という新しい支出が出来た。
一方物価の高騰は非常に大きな打撃を与えている。食費合計が140ドルから230ドルに、約2倍にまで跳ね上がった。そのため食費の月間支出に対する割合が61%にもなった。奥さんのビジネスがなければ、77%にも上るはずだった。その他の日常品の価格は変わっていないが、現在はこのような内訳になっている。奥さんからの80ドルの追加収入にもかかわらず、貯金額が半分近くに減った。
ヘンリーの一家はオフィスのすぐ近くに住んでいるため、出勤するための交通費はかかっていない。もし、家が遠かったらヘンリー一家の家計は破たんしていたはずだ。石油価格高騰のため、相乗りタクシーと「小型バス」(小さいバスにぎゅうぎゅう詰め)の価格も高騰しており、多くのドライバーは、実際フリータウンの中心から離れた所にすんでおり、交通費だけで1月約40ドルも支出している。これはヘンリーの今の貯金分にあたる。1日1ドル以下で暮らす貧困層が国民全体の57%ということを考えると、この物価高騰が人々に与えている影響は計り知れない。
コロンビア大教授のジェフリー・サックス氏が、米タイム誌にこの問題について投稿していた。彼は、今の食糧価格高騰に対して以下の対策をとりべきだと言っている。
- 貧困層の農民に対して、生産性の高い穀物と肥料を効果的に支給し
- バイオ燃料に対する政府補助を停止し
- 干ばつなどに対する対抗策を講じる
エコノミストの友人のブログでもこの問題について書いているのでご参考までに。皆さんならどういう対策を提案しますか?
3 件のコメント:
素晴しい分析ですね!食糧価格の影響が手に取るように判ります。僕のブログまでリンクしてもらってありがとうございます。
僕の聴いた話では、Biofuleが価格に与える影響が大きいようですね。
国や地域によって違うのですが、今回の価格上昇が需要と供給のアンバランスさによってもたらされたのか、それとも投機的な動きなのかが、まだきちんと議論されていないような気がします。
棒グラフを利用しての分析、分かりやすいです。このような分析によって、食糧価格高騰のインパクトがまざまざと思い知らされます。
ニュースチェックを怠りがちだったので反省ですが、せっかく「農業が貧困削減へ与える影響」について調査をしたばかりなので、この分野を掘り下げてみようと思います。
ニューヨーク生活はいかがですか?
Yoichiroさん、ばりばりのカントリー・エコノミストに褒められるのは非常に光栄です。:) WBとしてどのような対応をしていくのかも逐次教えてください。
Rikaさん、ブログ始めたようですね。ぜひ定期的に読ませていただきます。NYはあいにく雨ですが、久し振りの都会の雰囲気を楽しんでいます。
コメントを投稿